CA MOBILE TECH BLOG

株式会社シーエー・モバイルのエンジニア・デザイナーの活動を綴るブログです

株式会社シーエー・モバイルの技術広報による、
技術に特化したブログです。
エンジニアとデザイナーの活動や思想を綴ってゆきます。

教えて!シュガーさん(1)|デザイナー組織の耕し方

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サイバーエージェント執行役員・クリエイティブ統括室 室長の佐藤 洋介氏(通称:シュガーさん)が、シーエー・モバイル(以降、CAM)のクリエイティブ顧問に就任して約1年。

クリエイター初の執行役員として新たにデザイン組織をまとめ上げ、”クリエイティブに於いても一流”のサイバーエージェントブランドを目指すシュガーさんが、”半歩外” の立場から、子会社のデザイン組織の活性化に着手。技術力を伸ばすために仕掛けた施策とは?そしてその裏側にはどんなセオリーがあるのか?

ご本人の経験談とともに伺いました。

目次:

CAMデザイナーとの出会い

CAMは、グループ会社の中でも比較的関わりの少ない会社だったので詳細までは把握していませんでしたが、昔からビジネス色が色濃くて、社員が数字に対する鋭い感覚を持ち合わせている印象はありました。

一方で、デザイナーの上長がビジネス職だったり、評価が技術よりも営業利益に引っ張られたりと技術力を育てる・評価するという観点から見ると改善点の多い状況でした。

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部署ごとの独立性が高いので、所属部署が異なるデザイナー同士が交流する機会も少ないように感じました。

ビジネスサイドが色濃い分、デザイナーの立場が確立されておらず、クリエイティブに理解のない対応をされ悔しい思いをしたなんて話もメンバーから聞いたことがあります。

今から3〜4年ほど前に、現場のデザイナーが地位向上とノウハウの共有を目的に動き出して、「自主的に部署横断の勉強会を始めたので、制作物のレビュー方法などを学びたい」と、僕のところにきたんですよ。

そこで、サイバーエージェントで実施していた「サトウの日」という社長の藤田と僕で月一回実施しているクリエイティブ・レビュー会のCAM版を僕とCAMのデザイナー陣とでやってみようか、ということになったんです。

現場のデザイナーとはそれ以来の付き合いなので、昨年(2017年)CAMのクリエイティブ顧問に任命された時も、お互い違和感とか驚きとかはあまりなく、比較的すんなり施策実行に移ることができたと思います。


「半歩外」の人間として心がけたこと

石井社長(CAM)からまず言われたミッションは、クリエイターの技術の底上げと組織マネジメント体制の確立でした。

もし仮に僕がCAMに転籍して、クリエイティブディレクターとして全責任をもって取り組まなければならないなら、きっと異なるやり方を取ると思うのですが、今回はあくまでも”外部顧問”。

CAMのデザイナー組織の技術と意識を一定レベルまで引き上げるところまでを担保する、という前提で考えています。

「当事者」にはなれない分「半歩外」の人間として、遠慮という事ではなく、立ち位置を間違えないように注意しています。


CAMに過渡期のAmebaを見る

僕がCAMの現場に入ってまず感じたのは、CAMのデザイナーが置かれている状況が、昔のAmebaに似ているということでした。

組織が縦割りで、かつデザイナーを組織して引っ張っていくリーダーが不在のため、隣の部署のデザイナーが何をしているかわかりづらい上にノウハウの共有がなされない。

なので過去に僕がCAで取り組んだ施策を、そのまま活かせる素地があると感じました。

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強い人がドン!と評価を落とすというマネジメント方法もありますが、こういう混沌とした状況の中では、自然に実力値でヒエラルキーが形成されるように仕掛けて行くほうがいい。

でもそのためには、それぞれの立ち位置を知る必要があります。

やる事としてはまず、デザイナーを横でつなげること。隣でやってることが見えるようになったら、それぞれが勝手に見比べて自分のレベルがその上か下か、自分の中の物差しで測れますから。

「悔しいけど、あのクオリティは自分じゃ出せないな」とか、「俺だったらもっと良くできるのに!」とか、それぞれにそれぞれを知り始めるんです。


秩序と序列はなぜ必要か

僕がしきりにデザイナーの横の繋がりや序列が必要だと言っているのは、サイバーエージェントが2011年頃からスマホに注力し始めた時代の経験が元になっています。

当時は2年間で100個のスマホサービスを作るという目標を掲げて、有象無象に新規サービスが立ち上がる猛烈な時代でした。

サービスごとにメインデザイナーが必要になるため、レベルも経験値もまちまちなまま、新卒がいきなりメインを担当することも出てきます。

当然、そうなるとサービスによって、クリエイティブのクオリティにばらつきが出てきてしまいます。

その上、全体のクリエイティブに責任を持っている人間がいないとなると、みんなその惨状を傍目に見て思うことがあっても、何も言えないんですよね。

サイバーエージェントのブランドを冠して出すサービスのクオリティがバラバラだなんて、どう考えてもまずい状況なのに。

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だから僕は、「この100サービス全部のクオリティを上げます!やれる自信があります!」と、当時担当役員だった内藤(貴仁)さんに直談判したんです。まずはやらせてもらわないことには、実力も判ってもらえないし、言葉で言うだけでは誰もついてこない。

信頼を貯めていけるやり方を考えて、自分で体現してみようと行動に移しました。

まずは自分が関わったサービスをどんどんリデザインして、グロースさせました。

それ以外のサービスも、まずデザインの改善案を勝手に作って片っ端から提案をしてはリデザインを実施する、という動きを横に展開していきました。


藤田社長の施策をヒントに

その後「デザイン戦略室」というデザインの横軸組織ができて、事業毎にデザイン責任者がクリエイティブのクオリティを担保しようという時代に入りました。

混沌とした状況を脱するには、まず序列を明確にする必要があると感じていた時に、今も続いていて先日CAMでも開催した「デザイナーロワイアル(以降、デザロワ)」を思いついたんです。

これは、藤田社長がやっていた「ポイントすすむくん」からヒントを得た施策で、社内のサービスを対象に、出されたお題に対してデザイン改善案を提案する会議です。

案の優劣が明瞭なので、プレゼンの回を重ねていくうちに、実力のある人が自然と目立ってきてヒエラルキーが出来上がります。

良い施策だと言えます。


勝者の狂気が、周囲を震撼させる

デザロワは今まで幾度となく開催してきましたが、初回のバトルは格別で、本当に鮮烈な印象でしたね。

初回の参加者はベテランのデザイナー8名と、そこに若手を4人入れて、合計12人でやりました。

初めてのロワイアル形式で、若手もベテランも入り混じっての開催だったので、お互いに「絶対負けるものか!」とすごい鼻息が荒かったんですよ。(笑)

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初代の優勝者は鬼石という、今は「AbemaTV」のアートディレクターになったトップクラスのクリエイターなんですが、彼が出してきた案が、圧倒的に群を抜いていて。

課題は「あるサービスの改善案」だったのに、彼は「サービスをまるっとリブランディングする案」を持って来て、「だって、絶対にこっちの方がいいですよ!」と言い切ったんです。

実際、彼の言う通りだったんですが、期待値を大幅に超えてきた彼の提案を見てしまった他のデザイナーはみんな萎縮してしまって、その後に自分の案を出しづらくなっていましたね。(笑)

一方で「自分もこういうデザイナーになりたい!」と言い出す若手が出てきたりもしました。

これを見た時に、やっぱりデザイナーにはどんな事を言うよりも、実力を見せるのが一番だと確信しましたね。


条件が整えばクオリティは勝手に上がる

面白いことに、次のデザロワから、全員の提案のクオリティがグン!と上がったんです。まさに鬼石効果です。

そうすると、今度は案のぶつけ合いがものすごく白熱して、その“デザイナーたちの本気の殴り合い”を一目見ようとギャラリーがどんどん増えていきました。

最初は、8人入るくらいの会議室でしたが、あっという間に人が溢れて、大きなセミナールームを貸し切るぐらいになり、しまいには「人だかりでデザイン提案資料が見えない」というギャラリーの不満を解決するために、手元をモニターに映し出すシステムを作るまでになって(笑)

デザインって、視覚的だし主観で見られるから、エンジニアやディレクターといった他の職種のメンバーも興味を持ちやすいんです。

「ちょっとデザイナーの提案を見にいってみよう」と気楽に会場にきてみたら、まさかの壮絶バトルが展開されているという(笑)

だから、ちょうど過渡期の今のCAMには、この施策はハマるだろうと考えたんです。

デザイナーは成長するし、バトルを見にきたビジ側の人間にも、デザロワの現場を見せることで「デザイン提案の本質っていうのは、こういう事だよ!」っていうのを伝えられるんですよね。


組織側/デザイナー側の心得

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フラットな形でデザイナーの技術や力量を評価する場を作ることは、デザイン組織の成長にはとても重要です。

もっと言うと、そういう評価軸がない環境では、デザイナーを置く意味がないと思います。

一方デザイナーの方はというと、受け身でいないで、もっともっと欲を出して欲しいと思います。

組織の中で働いていると、思うところが色々出てくるはずです。それを口に出す時に実行は必ずセットで考えて、変化するための事例はどんどん自ら作っていって欲しいですね。

CAMを含め、歴史が長い会社だと、ある程度、凝り固まっている部分があるのは致し方ないことです。

でもそこを上からドン!とされるのを待つんじゃなくて、現場の方から違和感を感じる部分を取り上げて、きちんと処理していくというか、率先して動くことが大事。

そうする事で、デザイナーの存在感だったり”強さ”みたいなものを、しっかりと周囲にアピールしていけるようになると思います。



臨場感溢れる経験談の中には、様々なデザイン組織に適用できる数多くのヒントや教訓が、キラ星のごとく散りばめられていました。

続編(2)(※ 準備中)では、シュガーさんから教えていただいた、デザイナーのマネジメント・ヒントの数々を、項目立ててご紹介します。

デザイナーと上手に付き合いたい方、必見です!



(技術/クリエイティブ広報・桑田)